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東京モーターショーよりも、H.C.Rへ行こう

Hcr2007  H.C.Rとは「国際福祉機器展」のことです。今年(07年)で34回を数える由緒ある展示会です。
 テーマはそのネーミングのとおり、“ハンドメイドの自助具から最先端技術を活用した福祉車両まで、世界の最新の福祉機器”にあり、3日間の期間中約13万人の来場で、会場の東京ビッグサイト(東館すべてのフロアを使用)は、健常者はもちろん、車椅子の方、障碍をお持ちの方などで大混雑します。その詳細はこちらを参照して頂くとして、この展示会を自動車販売業界を対象に取り上げたのは、国内メーカーのすべての福祉車両が勢揃いする唯一のチャンスだからです。
 東京モーターショーでは、福祉車両はどうしても脇役です。その技術革新やユーザーマインドを知る上で、H.C.Rを外すわけにはいきません。
Daihatu  社員のスキルアップとモチベーションアップに、東京モーターショーを見学させる販売会社は少なくありません。しかし、H.C.Rを見学させる例は率直に言ってほとんどないでしょう。“あれはウェルキャブの展示会だからわざわざ行かなくても・・・”“担当がきっちりメーカーで研修を受けているから問題ないので”との意識がマネジメント側に固着し過ぎているからです。
 東京モーターショーよりも、H.CRで福祉車両のみならず、福祉・介護機器とそれを必要としている社会の現実を知る方が、これからの少子高齢化社会、特に地方部の販売会社では、どれだけ貴重な体験になるか考えたことがあるでしょうか?“
 カーライフアドバイザー”として、車まわりを考えておけばよい市場は消失しつつあるのです。お客さまの“ライフ”をアドバイスできるスキルの有無が、業界人の基本でありカーセールスに直結する時代が確実に到来しているのです。

■新車が売れないと商売に燃えない

 その前兆はうすうす感じておられるでしょう。
 これまで、確実な需要だった、運転免許とセットになった新卒・進級時の新車購入が減っていませんか。
 身体的な限界を理由に、車の保有を諦めてしまう年齢が下がっていませんか。
 介護や健康のために、自動車の保有を減らす、あるいは例を挙げるとセルシオからポルテへの代替のような、ダウンサイジングに踏み切るケースが増えていませんか。
 収入の不安を理由に、リッターカーから軽自動車に移行する傾向がありませんか。
 こんな時代に、車両本体の販売と、限りなく無料に近いサービスフィー、そして競争の激しいアフターパーツだけではゆとりある経営は厳しいでしょう。なので一生懸命に保険や金融商品をセールスしていますね。
 バリューチェーンの活性は車が売れてこそです。ところが車を売りにくいというのですから、問題解決は簡単ではありません。

■福祉車両だけでなく、福祉サービスを売っていく

 この分野で先行しているディーラーを、当社の『売れる空間と仕組みの最新』シリーズ掲載例からいくつかご紹介しましょう。
 02年6月にオープンしたのが香川三菱自動車販売(株)の「バリアフリーラウンジ坂出」。老朽化していた旧坂出店のリニューアルで、おそらく国内新車ディーラーでは初めての福祉車両の専門店となりました。三菱自動車の福祉車両を展示・販売するだけでなく、介護用品を含めたレンタルまで対応しています。同社は8拠点が香川県から介護保健法に基づく「指定居宅サービス事業者」の指定を受けており、住宅改装事業への参加をいち早く可能にしました。
 同時期に滋賀ダイハツ(株)は、同社大津店に隣接する場所に、福祉車両の常設販売店として「フレンドシップ大津店」をオープンさせています。店内には売れ筋の車両を3台展示、試乗車も3台を常備して、長時間の試乗に応える等のフォローを行っています。
 07年8月、長野トヨペット(株)は、福祉車両の扱いが多い徳間店(長野市)のような店舗の店長とスタッフ総勢12名に、NPO法人の認定資格「介助専門士」を取得させてています。福祉車両の販売強化のため、セールススタッフがお客さまの身体能力や心理状態を把握しながら接客応対ができるようにする狙いです。

■データベースの確かな業界ゆえにできること

 こうして現在、福祉車両の重要性は、既に新車販売店では常識のようになっています。専用の展示スペースも珍しくなくなってはいます。しかし「自社に福祉車両の試乗車は数台しかないので・・・」と予約制を当たり前にしている販売会社が普通です。福祉車両の販売は熱心でも、介護用品やサービスに取り組んでいる例はかなり限定的なのが現状です。
 私は新車販売店こそ、介護福祉サービス事業に取り組むべきと考えています。お客さまの情報をしっかり把握できており、信頼も厚いのが新車販売店の良さ(例外もありますが)であり、他の業態をリードできるポテンシャルなのです。車を売るというのは、お客さまの命を預かることをお忘れではないでしょう。信用がなければ数百万円を簡単に投資しません。
 これにより、車両本体に福祉車両をお薦めする(個人そして急増する介護施設のような法人も対象です)のみならず、家族に介護が必要になった際の駐車場や住宅の環境改善へのコンサルティングや施行、あわせて介護商品(主に消耗品等)の提供が可能になるのです。
 車のセールスチームと、“車と介護”のサービスチームが、販売会社の屋台骨となる時代がそこまでやってきているのです。実現は、販売会社トップの認識(H.C.Rを知らない経営者はダメです)と自信(地域社会貢献への具体ビジョンが必要です)、そしてメーカーの柔軟性次第でしょう。

■印象的なオレンジのテーマカラー

 しまった!H.C.Rには行けません(行きません)でした・・・という業界人のために、今回のH.C.R会場からメーカー各社の展示について、印象に残ったところをまとめておきましょう。

(1)トヨタ自動車
Toyota1  福祉車両でもシェア最大のトヨタ自動車は、最も広いブースを使っての展示です。同社は、福祉車両「ウェルキャブ」の総合展示場として「トヨタハートフルプラザ」を全国に展開しています。車いすの乗降チェックやリフトアップシートなどは展示車でも十分理解できますが、やはり自動車である以上、走行中の感覚や使い勝手の把握が必要です。そこで今年は、同じ臨海副都心にある同社の総合ショウルーム「MEGA WEB」で無料試乗会を実施、そちらへの案内をしていました。
 また、トヨタレンタカーへのウェルキャブ導入についても積極的に告知していました。既に全店でレンタルが可能となっており、料金も普通のレンタカーと同水準に設定されています。

(2)日産自動車
Nissaname  日産自動車は、福祉車両をライフケアビークル(LV)と称しており、全国390店を「LV認定店」として、展示車・試乗車の常設、専任スタッフ「LVアドバイザリースタッフ」のフォローを標準化しています。
 同社の展示ブースの伝統は、受付での「飴」の無料提供と、本社および銀座ギャラリーにも設置しているナチュラルウォーターサーバの設置です。今回の会場は蒸し暑く、車いすのポジションを意識した位置のウォーターサーバはたいへんありがたいサービスでした。こんなことからも、ブランドの介護に関する気持ちが伝わってくるのです。
Nissanmizu_2  

(3)ホンダ
Hondasoukouasist  本田技研工業は、福祉車両本体よりも、そこに導入された技術(運転補助のための「テックマチックシステム」や「フランツシステム」)をシミュレータ等を設置して体験理解を図ることにこだわっているように見えました。また、同社ご自慢の「ASIMO」の制御技術を活用した「装着型歩行アシスト」を参考出品ながら希望者には実際に装着して体験してもらうデモを実施していたのが印象的でした。
 Hondamonpal またホンダと言えば二輪メーカーでもあります。この分野では電動カート「モンパル」を、例によって走行シュミレーターとともに展示していました。このシミュレーターは非常に良くできていたように思いますが、一般的なドライブシミュレータとの違いを説明員が把握していないのは残念でした。
Hondaorazge  また同社の福祉車両の取扱店は「オレンジディーラー」と呼びそうですが、その規模や店舗数について、説明員に尋ねたところ「ホームページを検索して欲しい、ここではわからない」との返事。実際にググってみると、ありましたのでここで紹介しておきます。 ただし「オレンジディーラー一覧」のようなデータベースはありません。
 ちなみに、ダイハツ、日産、ホンダとも福祉車両のチャネルについては、オレンジのテーマカラーで共通しています。各社に聞くと、たまたま同じになったというのが実情のようです。

(4)スバル
Subaru1  スバルのブースで、最もスバルらしさ(走り、技術志向等)を訴求していたのが、電動スライドシート(ウイングシート)機能を載せた『ドライビングシュミレータ』です。店舗の週末と同様に、体験を希望する来場客で長蛇の列ができていました。

(5)三菱自動車
Mitubishi1  最も強烈な印象だったのは、三菱自動車の運転補助装置付き「トライトン」の展示でした。「アジアクロスカントリーラリー2007」に出場した、青木拓磨/松沼猛/イトポン・シマークス選手組が使った実車です。ハンドドライブ仕様として、ラリーのための各種装備に加えて、手動運転装置などの運転補助装置を装着しています。総走行距離2,250kmを走破して、出走25台中、総合7位(ガソリンクラス2位)の好成績を収めました。
 Mitusishi2 ドライバーの青木琢磨氏は元々二輪のチャンピオンでしたが、レース活動の事故で下半身不随となり、いったんは引退したものの、10年ぶりに四輪のラリードライバーとしてカムバックした、記念すべきレースで使われたトライトンです。健常者と同じ扱いで参加させたレース主催者もそうですが、それをサポートする同社のモータースポーツ、福祉車両への取り組みに今後も期待しましょう。この話をていねいに紹介してくださった(株)エフ・オー・ピーの老本秀之ゼネラルマネージャー(写真)に感謝します。

(6)スズキ
Suzuki  スズキのブースで、説明員の厳しい?視線に守られていたのが燃料電池セニアカー「MIO」です。メタノール型の燃料電池を採用、4リットルで60Kmの走行ができるということ。06年に発売が開始され、今回のモデルチェンジで機能強化が図られたようです。

 来年、2008年(平成20年)の国際福祉機器展( H.C.R. 2008)は、9月24日(水)〜26日(金、東京ビッグサイトでの開催が予定されています。今年見損なった、初めて知ったという自動車販売関係者は、お見逃しのないように、主催者に代わってお願いししておきましょう。

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