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副都心、どれだけ増えても副都心

 東京の湾岸部では、一時は停滞した観もあった再開発が再び活発化しています。なかでも最大の臨海副都心では、ゆりかもめから見た風景に限れば、以前はあちこちらに見かけた遊休地にプロジェクトが始まっているように感じます。
Toyosu
 こうした湾岸エリアで、その気になれば徒歩でも銀座まで行けることから、位置的・規模的に注目されているのが豊洲地区、正確には「豊洲2・3丁目地区再開発事業」です。一昨年くらいまでは石川島播磨重工のオフィスや東京造船所等が立地していましたが、造船所の閉鎖とともに、その広大な土地を再開発することになったのです距離で、住機能に加えて商業がオープンしました)、オフィスを加えた新しい副都心開発が進んでいます。江東区は、“湾岸地区最大の民間開発事業。東京都が策定した「 まちづくり方針」によると、将来的には就業人口約33,000人、居住人口22,000人の複合的な街づくり”と紹介しています。

 私にとってこの町は通勤路にあたり、毎日都営バスの窓から町の変遷を見てきました。それまで豊洲の景観の中心であった古いオフィスビルや工場、物流倉庫そしてスポーツ施設等が次々にスクラップされ、代わりに高層のオフィスビルや超高層・高層のマンションが次々に竣工を迎えています。まだ調査中とのことで、工事も始まらない晴海通り沿い場所(3街区・4街区)でも、いずれはランドマークを意識した超高層住宅兼オフィスビルが建設されることでしょう。そうなれば、この場所に造船所があったことも、片道4車線の直線が続く道路が航空機開発のためであったことも、そして付近は江東ゼロメートル地帯であることも、高層の窓から下界を見下ろす街ではいつしか忘れられていくのかもしれません。

 しかし徐々に完成していく街を見ていると、無機質感の高い景観や雰囲気に人気があることに驚きます。豊洲もそうですが、南側の東雲に至っては、運河沿いに50階クラスの超高層マンションが林立しており、湾岸道路から春海橋にかけての晴海通り沿いは、人工都市化が急速に進んでいるのです。

 まあデベロッパーの基本は「土地有効活用」ですから、地主や地権者そしてデベロッパーにとって最大利益をもたらす開発計画を立案して実行します。土地価格が高く上昇傾向にある首都圏では、特に「有効利用」にこだわるため、結果的に容積を重視した高層建築で街が作られることになります。そういえば『StarWars』や『フィフス・エレメント』など、SF映画で描かれる未来都市は、たいてい超超超超・・・高層建設をコアとしていますね。高いところに生活基盤を持ってきたいのは現代人の共通欲求なのでしょう。

■未来的な高層都市となる副都心、その高齢化を占う

 高層マンション主体の住街区であっても、建物内に交流スペースを設ける、あるいは街区に医療モールを設ける、公園のような公開空地を増やす等の機能構成によって、コミュニティづくりの舞台は用意されます。

 また、東京の下町と言っても、豊洲には工場用地ですから、そもそもの生活文化は限られており(豊洲団地や東雲団地が代表します)、現開発は既存集積とは決界しているようにも見えます。夏になれば御輿を担ぐようなお祭りもありません。新しい街に住まいを持った他人同士が、横の関係を作る機会はかなり限られるようです。

 基本的にマンションの住民の多数は「個」の空間、プライバシーの時間を優先するでしょうから、創出されるコミュニティは距離を持った関係が基盤になることでしょう。横の関係強化を望む人は珍しい存在なのかもしれません。

 分譲価格帯からすると、新しい住民は富裕層でしょう。基本的には、終の居住を考えているものと思います。こうした近所やコミュニティで支え合うことより、個別に希望するサービスを、お金を出して購入することによって、不便や不足を解消する生活を選択されるのでしょう。
 若い世代と壮年世代、そして高齢世代の3世代、子供、両親、祖父母の世代が家庭内のみならず、近所において互いの存在を認めあえるようなコミュニティの熟成、 3世代のコミュニケーションをベースとする介護や育児の環境づくりが、地域の安全や安心にもつながることが各地で実証されつつあります。豊洲も、40代以下の若い世代が住宅購買層の中心と仮定するならば、オリンピックが4回ほど開催される間に、高齢化を迎えた副都心ができることになります。

 それまで、それからも、ずっと“勝ち組”を続けて、個人(家族)が独力で解決していく、新自由主義の東京にふさわしいくらしを続けることになるのでしょうか。豊洲に隣接する街に住み続ける限り、その様子を高齢化の当事者としてもウォッチし続けたいと思います。

■官僚機構が定めた基準・ルールへの信頼は既に崩壊

 以前ならお上のすることは、融通がきかないけどその分かっちりしていて安心という信頼がありました。しかし、バブル崩壊から現代に至るまで、どうも様子が違う、お上のやってきたことは実は欺瞞だらけで、信頼に至らないと考えるのが無難な状況になっています。特に最近、これまでの欺瞞が吹き出してしまったようです。

1)厚生労働省の肝炎患者リスト放置問題
2)同じく社会保険庁の年金記録問題
3)防衛省の給油量訂正の隠蔽問題。
4)乳製品、食肉、ウナギ、菓子…食品の偽装問題。

 さらにショックだったのは、国土交通省、耐震強度偽装の問題です。姉歯物件で終息するかと思いきや、最近も“遠藤物件”が発覚するなど、まだまだ安心できません。この問題がマスコミ等で下火になっていったのは、様々な背景があるようです。当時、この問題で同省の最高責任者だった官僚は、既に政界に転じていますが、こんなことがあったわけで、防衛省の前事務次官と変わりないですね。“日本にはもう偽装物件がひとつもありません”、お上は断言できるでしょうか?

 また、豊洲で想起されるのが、土壌の問題です。毎日新聞(07年10月17日の報道)によれば“平成12年開場を目指す豊洲の新市場建設予定地で、地下水から最高で環境基準の1000倍の害物質ベンゼンなどが検出された”ことです。都では、予定地全域でさらに詳細な調査を行うとのこと。これについても、以前から汚染疑惑はさんざん指摘されてきたのですが、東京都は安全であることを繰り返し主張していました。

 “新市場予定地の土壌汚染については、汚染原因者である東京ガスの責任により処理を行う。東京ガスは、環境確保条例に定める土壌汚染処理基準の10倍を超える汚染土壌については、すべて処理基準以下となるよう処理をする。また、10倍以下の汚染土壌についても条例で定める土壌汚染対策指針に基づき用地全体を覆土し飛散を防止することとしていることから、安全性に問題はない”というスタンスです(中央区への平成18年2月の回答より)。

 ところが今回、予定地の56地点の地下水の検査から、有害物質ベンゼンが14カ所で、シアン化合物18カ所で見つかったのです。いったい「専門家会議」は何をやっていたのでしょう。

■想定していないのか、想定したが結果を加えなかったのか?

 ホリエモンではないですが、“想定外”が多すぎます。究極は2007年7月の中越沖地震における、柏崎刈羽原発の被害です。“原発は大地震に耐えうる堅固な建設”であったはずなのに、耐震基準を超える“想定外”の揺れが発生したために、周知のような被害が発生しました。

 事故が起こるたびに、この“想定外の・・・”という説明が使われます。では想定外の事態をシミュレーションしていないエンジニアリングには価値があるのでしょうか?エンジニアリングの現場はしっかりやっていると信じます。問題は、事業主であって、彼らの官僚的事なかれ主義やコスト削減、利益重視&ブランド過信です。社会責任への理解力や認識が欠如しているためなのです(結局、物事を決定する人間・組織の資質がすべてなんですね)。基準に基づいて的確な調査を行い、対策に万全を期したことはあくまで内部向けであって、額面通りに信じてはいけない。そう心して、自らが調査力を発揮しなければ、安心して暮らせない時代になってしまいました。

 筆者は豊洲に続く湾岸の江東ゼロメートル地帯の高層物件に住んでいます。30階の部屋ですが、なぜか和室の引き戸のフレームが歪んでいるようで滑らかに開閉しなくなっています。ビー玉を床に置いてみると、静止せず少しずつ動いていってしまいます。2007年7月の中越沖地震の際に、その揺れは生まれて初めての大きさで、免震構造の特徴もあるのでしょうが、揺れが長いという特徴もあって、壁にひっついていなければ立っていられないほどでした。平成元年の竣工です。既にガタが来ているわけではないでしょうが、何となく山陽新幹線の土木工事を思い出してしまうのです。

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